新取得!海洋ミネラルmcmの取得をご紹介④ 「農業用組成物」

平成30年12月21日登録。 MCMが新たに特許取得いたしました!

MCMの特許第6454806号(平成30年)
【発明の名称】「農業用組成物」

【特許請求の範囲】
【請求項1】 海水中のプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水濃縮液に、リン酸カルシウムと酢酸カリウムを加え、反応させて得られる固形物を含む流動体から塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して得られる海洋ミネ ラル複合体を含む、農業用組成物。

【請求項2】 植物成長促進剤、植物収量増加剤、光合成促進剤又は病虫害抵抗性向上剤である、請求項1に記載の農業用組成物。

【請求項3】
イネに施用される、請求項1又は2に記載の農業用組成物。

【請求項4】 海水中のプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水濃縮液に、リン酸カルシウムと酢酸カリウムを加え、反応させて得られる固形物を含む流動体から塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して海洋ミネラル複合体を生成させることを含む、農業用組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用組成物及びその製造方法に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、ミネラルは、食品として利用される他、医薬や飼料などにも広く利用されている。ミネラルの中でも、海洋ミネラルは、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)などの常量元素に加え、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)などの生体内必須微量元素が含まれているため、各種治療剤や飼料に有用に用いられてきた。

【0003】
本発明者は、これまでに、医薬分野や畜産分野において海洋ミネラルを有効に用いることができることを見出している(特許文献1、2)。
【0004】
一方、農業分野においては、収量増加の目的で、肥料、除草剤、殺菌剤、殺虫剤などの農薬が用いられ、一定の効果をあげてきた。しかしながら、これらの農薬の中には、使用者の健康に害を及ぼしたり、環境に悪影響を及ぼすものがある。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-120578号公報
【特許文献2】特開2010-88311号公報

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、農業分野においては、使用者の健康や環境に悪影響を与えることなく、収量増加を達成できる農業用組成物が求められている。それ故、本発明は、使用者の健康や環境に悪影響を与えることなく、収量増加を達成できる農業用組成物を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、海洋ミネラル複合体を含む組成物を用いることにより、植物の収量を増加することができることを見出し、発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0008】
(1)海水中のプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水濃縮液に、リン酸カルシウムと酢酸カリウムを加え、反応させて得られる固形物を含む流動体から塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して得られる海洋ミネラル複合体を含む、農業用組成物。
(2)植物成長促進剤、植物収量増加剤、光合成促進剤又は病虫害抵抗性向上剤である、前記(1)に記載の農業用組成物。
(3)イネに施用される、前記(1)又は(2)に記載の農業用組成物。
(4)海水中のプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水濃縮液に、リン酸カルシウムと酢酸カリウムを加え、反応させて得られる固形物を含む流動体から塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して海洋ミネラル複合体を生成させることを含む、農業用組成物の製造方法。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用者の健康や環境に悪影響を与えることなく、収量増加を達成できる農業用組成物を提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1Aは、実施例における試験区のイネの穂の部分の拡大写真であり、図1Bは、実施例における対照区のイネの穂の部分の拡大写真である。
【図2】図2Aは、実施例における試験区のイネの根の部分の拡大写真であり、図2Bは、実施例における対照区のイネの根の部分の拡大写真である。

【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の農業用組成物は、海洋ミネラル複合体(以下、MCM(Marina Crystal Minera ls)とも記載する)を含む。
【0013】 MCMは、海水中のプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水濃縮液に、リン酸カルシウムと酢酸カリウムを加え、反応させて得られる固形物を含む流動体から塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して得られる。得られたMCMは、海水中のプランクトンによりキレート化されている。
【0014】 MCMの製造に用いることができる海水としては、例えば、水深約80~120m程度の清浄な海水域から汲み上げた海水を用いることができる。表1に、典型的な黒潮海域( 大洗沖)の海面下約100mで汲んだ清浄な海水18リットルに含まれる主要元素とその割合を示す。なお、海水には、表1で挙げた元素以外に、マンガン(Mn)や銅(Cu) などの元素も含まれている。
【0015】
【表1】
【0016】 MCMの製造に用いることができるリン酸カルシウムとしては、例えば焼成したリン酸カルシウムを用いることができる。MCMの製造に用いることができる酢酸カリウムは、例えば酢酸に硝酸カリウムを添加することにより調製することができる。
【0017】 リン酸カルシウムと酢酸カリウムの海水濃縮液への添加は、特に限定されずに、リン酸カルシウムと酢酸カリウムを同時に、別々に、又は順次に海水濃縮液へ添加することができるが、好ましくは、リン酸カルシウムに酢酸カリウムを投入したものを海水濃縮液に添加する。リン酸カルシウム及び酢酸カリウムを海水濃縮液へ添加する際、必要に応じてマグネシウム(Mg)などのミネラルを塩化物などの形で補強してもよい。また、不純物の吸着除去のために活性炭などの吸着剤を用いてもよい。
【0018】
塩化ナトリウム及び水銀などの有毒成分の除去は、沈殿した塩化ナトリウム及び有毒成分をろ過することによって行うことができる。
【0019】
MCMは、例えば、以下のようにして得られる。海水、好ましくは太陽光線の届く深度である水深約80~120mの海水を通常150~250L、好ましくは200L採取し、この原料海水を通常1/3~2/3、好ましくは1/2になるまで加熱濃縮して海水濃縮液を得る。塩化マグネシウム及び活性炭を用いる場合、この海水濃縮液に、体積比で0.1~0.3%、好ましくは0.2%の塩化マグネシウム及び0.0005~0.002%、好ましくは0.001%の活性炭を添加し、約100°Cに加熱する。そして、海水濃縮液に対する体積比10~30%、好ましくは20%のリン酸カルシウムを約300~600°C(例えば500°C)に焼成し、これにリン酸カルシウムに対して0.5~1.5体積倍、好ましくはほぼ同体積の酢酸カリウムを投入して反応させた後、これを海水濃縮液に投入し全体を固形物とする。全体を固形物とするには、リン酸カルシウムに対してほぼ同体積の酢酸カリウムを投入したものを複数回に分け(通常8~10回)、海水濃縮液に投入する。酢酸カリウムは、例えば酢酸に対して体積比10%の硝酸カリウムを添加することにより調製する。酢酸は含量98~99.9%グレードの酢酸が好ましく用いられる。この固形物約30Lに原料海水40~50L、好ましくは45Lを加えて固形物を含む流動体とした後、これを室温で100時間以上、好ましくは150~350時間沈殿槽に置き塩化ナトリウム及び比重の大きい重金属(例えば水銀など)を沈殿させる。これをろ過すると沈殿物と不純物を除去した透明な水溶液を得ることができる。ろ過はろ紙又は樹脂フィルターなどを用いて行うことができる。この水溶液を体積比で1/3~1/5、好ましくは1/4に加熱濃縮した後、室温に冷却し、飽和に近い状態のMCM水溶液を得る。
【0020】
MCMは、原料の海水及び添加したリン酸カルシウム、酢酸カリウムなどに由来する元素を含む。MCMは、例えば、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、炭素(C)、ケイ素(Si)、窒素(N)、リン(P)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、セレン(Se)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、水素(H)及び酸素(O)から選ばれる1種以上の元素を含み、好ましくはこれらの元素を全て含む。ここで、MCMに含まれるナトリウム(Na)は、原料海水中に含まれるNaのうち、塩化ナトリウムとして除去されずに残存したナトリウムである。MCMは、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、水銀(Hg)などの有毒成分を含まない。
【0021】
本発明の農業用組成物は、前記の方法により得られたMCM(好ましくは水溶液の形態)をそのまま用いたものであってもよく、また、MCMに、農業用組成物に通常使用される添加剤を配合したものであってもよい。本発明の農業用組成物は、好ましくは、前記の方法により得られたMCM水溶液をそのまま用いたものである。農業用組成物中のMCMの含有量は、特に限定されずに、固形分換算で好ましくは0.1重量%~100重量%であり、より好ましくは10重量%~90重量%である。添加剤としては、シリカ、ケイ藻土、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライトなどの固形肥料や、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化カルシウムなどの水可溶性肥料や、ビタミンCなどの微量栄養素や、バリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、アラニン、シスチン、グリシン、イソロイシン、プロリン、アデニンなどのアミノ酸・核酸などを用いることができる。また、必要に応じて、沈殿防止剤、展着剤、防腐剤、増粘剤、賦形剤などを用いることもできる。
【0022】
本発明の農業用組成物の形態は特に限定されるものではなく、例えば、粉末、エマルジョン、ペースト、顆粒、水性若しくは油性の溶液又は懸濁液であってよいが、取り扱いの容易性、安全性及び製造効率の観点から水溶液の形態が好ましい。
【0023】
本発明の農業用組成物は植物に施用できる。本発明の農業用組成物を施用し得る植物としては、例えば花卉、野菜、果樹、食用作物、工芸作物などが挙げられる。花卉としては、例えばカーネーション、シンビジウムなどの洋蘭類、パンジーなどのスミレ類、ユリ類、スターチス、プリムラ類、トルコギキョウ、キク類、ケイトウ、ガザニア、キンレンカ、リビングストンデージー、バラ、葉ボタンなどの観葉植物類が挙げられる。野菜としては、例えばトマト、ナス、カボチャ、スイカ、ピーマン、パプリカ、メロン、キュウリ、イチゴ、サヤインゲンなどの果菜類、キャベツ、コマツナ、ネギ、ニラ、レタス、ホウレンソウ、セロリ、パセリ、シソ、シュンギク、アスパラガス、タマネギなどの葉菜類、ニンジン、ダイコン、カブ、ゴボウ、レンコン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモなどの根菜類、ブロッコリー、カリフラワーなどの花菜類が挙げられる。果樹としては、例えばミカンなどの柑橘類、リンゴ、ナシ、モモ、スモモ、オウトウ、ウメ、カキ、ブドウ、イチジク、キウイフルーツ、ブルーベリーなどのベリー類などが挙げられる。食用作物としては、例えばイネ、麦類、雑穀類、トウモロコシなどが挙げられる。工芸作物としては、例えば茶、コンニャク、イ草、タバコなどが挙げられる。本発明の農業用組成物を施用し得る植物としては、イネが好ましい。

本発明の農業用組成物は、通常の方法で植物に施用することができ、例えば、農業用組成物を植物に直接施用しても、水で希釈したものを施用しても、珪藻土や炭酸カルシウムなどの担体に吸着させたものを散布することにより施用してもよいが、水で希釈したものを施用することが好ましい。水で希釈する場合、例えば500倍~1500倍に希釈する とよい。本発明の農業用組成物を水で希釈したものを植物に施用する場合は、葉面散布、 土壌への灌注の何れも可能であり、播種又は移植前の土壌に予め混合してもよいが、葉面散布が好ましい。また、適当な水溶性肥料と混合して施用することも差し支えない。本発明の農業用組成物を担体に吸着させたものを施用する場合は、吸着させたものを土壌と混合しても、表土上に散布しても差し支えない。有効施用量は、1平方メートルあたり固形分として好ましくは0.1~500g、より好ましくは1~50gである。さらには、移植の際に根が露出している段階で、一定時間、本発明の農業用組成物の希釈液に根を浸漬して吸収させる方法も可能である。また、本発明の農業用組成物の希釈液に種子や苗の一部又は全部を浸漬して、組成物を種子や苗に吸収させる方法も可能である。
【0025】
本発明の農業用組成物は、MCMが、カリウム、鉄、マンガン、マグネシウム、亜鉛などを含むことにより、光合成を促進することができ、また、MCMが、カルシウム、マグネシウムを含むことにより、植物生体内の糖分移動を促進することができる。したがって、本発明の農業用組成物は、植物成長促進剤、植物収量増加剤及び/又は光合成促進剤として用いることができる。
【0024】
本発明の農業用組成物は、MCMが、カルシウム、カリウム、ケイ素、鉄などを含むことにより、植物の細胞組織を強化するとともに根や茎葉を丈夫にし、病虫害抵抗性を向上させることができる。したがって、本発明の農業用組成物は、病虫害抵抗性向上剤として用いることができる。
【0027】
本発明は、前記の農業用組成物の製造方法にも関する。本発明の農業用組成物の製造方法は、海水中のプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水濃縮液に、リン酸カルシウムと酢酸カリウムを加え、反応させて得られる固形物を含む流動体から塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して海洋ミネラル複合体を生成させることを含む。
【0026】
【0028】
本発明は、前記の農業用組成物を植物に施用する方法も含む。本発明の農業用組成物を植物に施用する方法は、前記の農業用組成物を植物及び/又は植物の生育環境に施用することを含む。
【0029】
本発明は、さらに、前記の農業用組成物を植物に施用することを含む、植物の成長を促進する方法、植物の収量を増加する方法、光合成を促進する方法、及び/又は病虫害抵抗性を向上する方法も含む。これらの方法において、本発明の農業用組成物を施用することができる植物は、特に限定されずに前記の植物であり、イネが好ましい。本発明の農業用組成物の施用方法については、農業用組成物について前記の通りである。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
MCM液の調製
黒潮海域(ひたちなか市沖)の海面下約100mの清浄な原料海水を200L採取し、これを加熱濃縮して100Lの海水濃縮液を得た。この海水濃縮液に体積比で0.2%の塩化マグネシウム、及び0.001%の活性炭を添加し、100°Cに加熱した。別に、海水濃縮液に対する体積比20%のリン酸カルシウムを約500°Cに焼成し、これにリン酸カルシウムと同体積の酢酸カリウム(酢酸に体積比10%の硝酸カリウムを添加して調製した)を投入して酢酸カルシウムに変化させた後、全体が固形物となるまで海水濃縮液に投入した。全体が固形物となるまでにこの操作を8回繰り返した。この固形物約30Lに原料海水45Lを加えて固形物を含む流動体とした後、これを室温で120時間沈殿槽に置き塩化ナトリウム及び水銀などの比重の大きい重金属を沈殿させた。これをろ紙でろ過して沈殿物と不純物を除去した澄明な水溶液を得た。この水溶液を体積比で1/4に加熱濃縮し、室温に冷却し、MCM水溶液を得た。このMCM水溶液は、飽和に近い状態であった。
【0032】
圃場試験
MCM液をイネ(ヒノヒカリ)の圃場試験に用いた。具体的には、圃場を、MCMを施用する圃場(試験区)と、MCMを施用しない(普通)圃場(対照区)に区分し、下記表2に示す栽培履歴で圃場試験を行った。試験区では、表2に示す所定の希釈倍率に水で希釈したMCM希釈液を、苗の時に2回、生育過程で3回葉面散布した。坪刈りでは、株を刈取り、それらを天日干しで乾燥し、簡易脱穀機、簡易籾摺機を使用して処理し、評価を行った。
【0033】

【表2】
【0034】
評価結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
評価結果について以下で説明する。2017年の圃場試験の評価結果(表3)とともに 、2016年に行った同様の圃場試験の評価結果をあわせて示す。
【0037】
[収量評価] 表3に示すように、試験区では穂当り籾数、籾重量及び玄米重量がいずれも対照区と比較して有意に増加しており、MCMを用いることにより収量が増加していた。MCMに含まれるカリウム、鉄、マンガン、マグネシウム、亜鉛などによる葉緑素生成・光合成の促進や、カルシウム、マグネシウムによる植物体内の糖分移動の促進などにより、収量が増加したものと考えられる。また、図1Aに、試験区のイネの穂の部分の拡大写真を示し、図1Bに、対照区のイネの穂の部分の拡大写真を示す。図1A及びBからも、試験区では、穂当り籾数が対照区と比較して増加していることがわかる。また、図2Aに、試験区のイネの根の部分の拡大写真を示し、図2Bに、対照区のイネの根の部分の拡大写真を示す。図2A及びBより、試験区では、対照区と比較して発根量が多く、根の長さが長く、耐倒伏性が向上していることがわかる。
【0038】
2016年の圃場試験における、苗についての評価結果を表4に示す。
【0039】 【表4】
【0040】 表4において、苗の充実度は、乾物重量を草丈で除して求められ、苗の充実度が高いと、生育の過程で発根量が多くなり、根の長さが長くなり、耐倒伏性が向上すると予測される。また、乾物重歩合は、乾物重量を生体重量で除して求められ、乾物重歩合の低い苗は軟弱な苗であり、乾物重歩合の高い苗は健全な苗であるといえる。健全な苗は、軟弱な苗に対し、生育の過程で分げつ数及び穂数が増加し、最終的に収量が増加することが予測される。表4より、試験区では、対照区と比較して苗の充実度が高く、生育後の発根量が多く、根の長さが長くなることが予測された。また、試験区では、対照区と比較して乾物重歩合が高く、苗が健全であり、最終的な収量が増加することが予測された。MCMに含まれるカルシウム、カリウム、ケイ素、鉄などが、植物の細胞組織を強化するとともに根や茎葉を丈夫にし、耐倒伏性を向上させ、また、MCMに含まれるカリウム、鉄、マンガン、マグネシウム、亜鉛などによる葉緑素生成・光合成の促進や、マグネシウムとリン酸、窒素間の相助作用によるタンパク質合成の促進なども、数値向上に影響したものと考えられる。
【0041】
[籾摺り時重量減少率] 表5に、試験区及び対照区のイネの籾摺り時の重量減少率を示す。表5より、試験区では、対照区と比較して籾摺り時の重量減少率が小さく、籾中の玄米の割合が高く、籾殻の割合が低かった。
【0042】
【表5】

【0043】
[粒径の割合]
表6に、試験区及び対照区のイネを精米して得た白米の粒径の測定結果を示す。表6より、試験区では、対照区と比較して2.0mm以上の粒径の大きい米の割合が有意に高く、ロス米が少ないことが示された。MCMに含まれるカルシウム、マグネシウムなどが、光合成によって生じた糖分(デンプン)の穂への移動を促進することにより、粒径が向上したと考えられる。
【0044】
【表6】
【0045】
[官能検査]
試験区と対照区のイネを精米して得た白米を炊飯し、これを試験試料として、対象者30名による官能試験を行った。その結果、試験区の米が美味しいと評価した人数は22名であり、対照区の米が美味しいと評価した人数の8名より有意に多かった。
【0046】
[耐病性評価]
圃場試験において、対照区ではモン枯れ病が発生したが、試験区では発生しなかった。これは、MCMに含まれるカルシウム、カリウム、ケイ素、鉄などが、植物の細胞組織を強化するとともに根や茎葉を丈夫にし、病虫害抵抗性を向上させたものと考えられる。
【0047】
[食味評価]
試験区及び対照区のイネから得た玄米及び白米のアミロース、タンパク質、水分、脂肪酸度、窒素量を分析したが、試験区と対照区で有意差はなかった。

【要約】
【課題】本発明は、使用者の健康や環境に悪影響を与えることなく、収量増加を達成できる農業用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、海水中のプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水濃縮液に、リン酸カルシウムと酢酸カリウムを加え、反応させて得られる固形物を含む流動体から塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して得られる海洋ミネラル複合体を含む農業用組成物及びその製造方法に関する。

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