特許第5670018号(平成26年)
「畜産動物飼料添加剤」
【課題】 生体内必須微量元素を含む海洋ミネラル成分を有効成分とする畜産動物飼料添加剤を提供する。
【解決手段】 海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウムおよび有毒成分を除去して得られる、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる常量及び生体内必須微量元素含有海洋ミネラル複合体を有効成分とする畜産動物飼料添加剤。カルシウムを補強した前記海洋ミネラル複合体を有効成分とする畜産動物飼料添加剤が好ましい。
特許請求の範囲
【請求項 1】 海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウムおよび有毒成分を除去して得られる、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる常量及び生体内必須微量元素含有海洋ミネラル複合体を有効成分とする畜産動物飼料添加剤。
【請求項 2】 畜産動物が鶏である請求項1に記載の畜産動物飼料添加剤。
【請求項 3】 前記ミネラル分を含有する海水の濃縮液に酢酸カルシウムを加えて反応させ、これによりカルシウムを強化した海洋ミネラル複合体を有効成分とする請求項1または2に記載の畜産動物飼料添加剤。
【請求項 4】 炭酸カルシウムを焼成し、これに酢酸を投入することにより前記酢酸カルシウムに変化させ、 これを、前記海水の濃縮液に投入することによりカルシウムを強化した海洋ミネラル複合体を有効成分とする請求項3に記載の畜産動物飼料添加剤。
【請求項 5】 海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する前記海水の濃縮液に木炭粉と酢酸を添加し、 加熱後冷却することにより塩化ナトリウムと有毒成分を沈殿として除去し、得られるキレート化したミネラルを含む結晶性固体粉末からなる海洋ミネラル複合体を使用する請求項1~4のいずれか1項に記載の畜産動物飼料添加剤。
【請求項 6】 前記ミネラルを含む結晶性固体粉末からなる海洋ミネラル複合体がプランクトン由来の有機成分を20~30質量%含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の畜産動物飼料添加剤。
【請求項 7】 海洋ミネラル複合体が、常量元素としてのカルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、およびマグネシウム(Mg)のほかに、生体内必須微量元素を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の畜産動物飼料添加剤。
【請求項 8】 海洋ミネラル複合体が、生体内必須微量元素として、少なくともセレン(Se)、亜鉛(Zn)、 鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、および珪素(Si)のいずれか 1以上を含む請求項7に記載の畜産動物飼料添加剤。
発明の詳細な説明
【技術分野】
本発明は、海洋ミネラル複合体を有効成分とする畜産動物飼料添加剤に関する。更に詳しくは、 海水濃縮液から塩化ナトリウムおよび有毒成分を除去した海洋ミネラル複合体を有効成分とする畜産動物飼料添加剤に関する。
【背景技術】
海水中には、地球誕生後36億年間に海底の熱泉鉱床から湧き出したミネラルおよび陸地から流出したミネラルが溶解しており、生体内必須微量元素が含まれている。生体内に流れる血液あるいは体液の成分は、原始海洋成分に酷似するといわれており、前記微量元素が生体の生命活動を支える細胞レベルの代謝に必須な構成要素であることは以前から予想されている。 最近、生体内に低濃度しか存在しない生体内必須微量元素の分析に必要な測定法が進歩し、また生化学的検討で種々の生体内必須微量元素の機能が明らかにされ、生体内必須微量元素の生体における必須性が確認されるようになっている。
蛋白質、核酸、血液等として、生体を構成している主要元素は、水素(H)、酸素(O)、炭素 (C)、窒素(N)であり、これに少量のリン(P)や硫黄(S)が含まれている。さらに骨や体液を構成する元素として、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、塩素(Cl)がある。これら常量元素に対して、生体内には、生体内必須微量元素が存在する。すなわち、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ひ素(A s)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、珪素(Si)、フッ素(F)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、よう素(I)等である。
これらの生体内必須微量元素はいずれも荷電状態が変化しやすい遷移元素であり、生体内で電子授受による酸化還元反応の触媒となる酵素や補酵素の構成因子として働くものが多い。近年、クロムや亜鉛等の生体内必須微量元素の欠乏で、インスリンを要求する糖代謝の障害やタンパク質、核酸代謝の異常が起こること等からこれら生体内必須微量元素の機能が明らかにされてきた(最新医学,45,808,(1990) 等)。また、糖尿病については、実験糖尿病マウスに対する海水ミネラルの効果が確認されている(日本医事新報,第3675号、平成6年10月1日発行)。
本発明者らは、海水中に含まれる海洋ミネラルの生体への作用について研究を進め、既に、海水濃縮液から塩化ナトリウムを可能な限り除去した後、さらに水銀等の有毒成分を除いた、常量及び生体内必須微量元素含有ミネラル複合体( Marina Crystal Mineral ;以下、MCMと略記することがある。)を有効成分とする、肝炎、高血圧、腫瘍、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギーに有効な治療剤を提案している(特許第3247620号)。
【非特許文献 1】
最新医学,45,808,(1990)
【非特許文献 2】
日本医事新報,第3675号、平成6年10月1日発行
【特許文献 1】
特許第3247620号公報
発明の開示
【発明が解決しようとする課題】
一方、従来、人や動物のウイルスや病原性細菌の感染症には抗ウイルス剤や抗生物質が投与され、病原微生物の生体内への侵入を防御してきたが、抗生物質の多用による耐性菌の出現や、畜産動物にあっては食肉などへの抗生物質の残存などの問題が生じてきた。近年の免疫学の進歩により、人や動物のウイルスや病原性細菌による感染症は免疫機能の不全または免疫力の低下によると考えられてきた。また、畜産動物の飼養は、一般に大規模多数飼育のため、その密飼ストレスにより免疫力が低下した畜産動物が感染症に罹りやすい問題が起きている。さらに、近年、薬剤耐性菌の出現や薬剤汚染のない畜産動物への関心が高まり、一部の抗菌性飼料添加物の使用禁止や規制が強化されている。
従って、本発明の目的は、海水由来の生体内必須微量元素を利用し、畜産動物のウイルスや病原性細菌に対する抗体力や感染症に対する免疫の強化剤からなる畜産動物飼料添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下に示される海洋ミネラル複合体を有効成分とする畜産動物飼料添加剤の発明である。
(1) 海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウムおよび有毒成分を除去して得られる、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる常量及び生体内必須微量元素含有海洋ミネラル複合体を有効成分とする畜産動物飼料添加剤。
(2) 畜産動物が鶏である前記1に記載の畜産動物飼料添加剤。
(3) 前記ミネラル分を含有する海水の濃縮液に酢酸カルシウムを加えて反応させ、これによりカルシウムを強化した海洋ミネラル複合体を有効成分とする前記1または2に記載の畜産動物飼料添加剤。
(4) 炭酸カルシウムを焼成し、これに酢酸を投入することにより前記酢酸カルシウムに変化させ、これを、前記海水の濃縮液に投入することによりカルシウムを強化した海洋ミネラル複合体を有効成分とする前記3に記載の畜産動物飼料添加剤。
(5) 海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する前記海水の濃縮液に木炭粉と酢酸を添加し、加熱後冷却することにより塩化ナトリウムと有毒成分を沈殿として除去し、得られるキレート化したミネラルを含む結晶性固体粉末からなる海洋ミネラル複合体を使用する前記1~4のいずれか1項に記載の畜産動物飼料添加剤。
(6) 前記ミネラルを含む結晶性固体粉末からなる海洋ミネラル複合体がプランクトン由来の有機成分を20~30質量%含有する前記1~5のいずれか1項に記載の畜産動物飼料添加剤。
(7) 海洋ミネラル複合体が、常量元素としてのカルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリ ウム(K)、およびマグネシウム(Mg)のほ かに、生体内必須微量元素を含む、前記1~6 のいずれか1項に記載の畜産動物飼料添加剤。
(8) 海洋ミネラル複合体が、生体内必須微量元素として、少なくともセレン(Se)、亜鉛(Z n)、鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、および珪素(Si)のいずれか1以上を含む前記7に記載の畜産動物飼料添加剤。
【発明の効果】
本発明によれば、海洋ミネラル複合体を有効成分とする畜産動物飼料添加剤として、畜産動物のウイルスや病原性細菌に対する抗体力や感染症に対する免疫の強化剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
[ 常量及び生体内必須微量元素含有ミネラル複合体の製造方法 ]
本発明の畜産動物飼料添加剤では、海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウムおよび有毒成分を除去して、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる常量及び生体内必須微量元素含有海洋ミネラル複合体(MCM)を得、これをその有効成分とすることができる。
本発明で用いる海水はプランクトンが棲息し得る海域におけるものであれば特に限定されないが、その成分の通年変化が少なくミネラル分に富んだ海水深層水が好ましい。ここで、海水深層水とは、水温躍層下の低温水である。特に好ましくは、プランクトンが豊富に生育している海域下の海水深層水であり、例えば、大洗海岸沖やひたちなか市沖(茨城県・日本)などの太平洋沿岸の海水深層水が用いられる。
本発明では、前記ミネラル分を含有する海水の濃縮液に酢酸カルシウムを加えて反応させ、これによりカルシウムを強化した海洋ミネラル複合体(カルシウム補強MCM)を作成することができる。カルシウムを補強するときは、好ましくは塩化ナトリウムおよび有毒成分を除去後の海水濃縮液に酢酸カルシウムを加えて反応を進めるが、除去前の海水濃縮液に加えてもよい。
好適には、炭酸カルシウムを焼成し、これに酢酸を投入することにより酢酸カルシウムに変化させ、これを、前記いずれかの海水濃縮液に投入することによりカルシウムを強化した海洋ミネラル複合体(カルシウム補強MCM)を作成することができる。前記ミネラル分を含有する海水の濃縮液に、通常体積比10~30%量、好ましくは20%量の炭酸カルシウムを、通常約300~500°C、好ましくは約400°Cに焼成しこれに通常含量約90~100%、好ましくは98~99.9%グレード酢酸を投入することにより酢酸カルシウムに変化させ、これを通常約100~300°C、好ましくは約15 0~200°C程度の温度帯下で前記いずれかの海水濃縮液に、通常体積比1~30%量、好ましくは5~20%量投入し、反応を進める。なお、前記酢酸カルシウムに変化させるときの酢酸の投入量は、通常、体積比で炭酸カルシウムに対して0.5~1.5倍量を用い、炭酸カルシウムと同体積量程度が好ましく、前記酢酸カルシウムの投入は、前記いずれかの海水濃縮液の体積を、好ましくは約1/2~1/80程度、例えばあまり濃縮する必要がない場合は、約1/3~1/7程度、例えば約1/5程度に濃縮してから実施してもよいし、もっと濃縮する必要がある場合は、それ以上、例えば約1/30 ~1/60程度に濃縮してから実施してもよく、前記海水濃縮液の体積をどの程度まで濃縮してから前記酢酸カルシウムの投入を実施するのかは特に限定されず、20~40分の1程度まで濃縮してからでも、約30分の1程度まで濃縮してからでもよい。
反応が沈静化した後、結晶化させることにより、カルシウムを補強した海洋ミネラル複合体を含有する畜産動物飼料添加剤を得ることができる。なお、前記反応開始後、通常約100~200時間、好ましくは約150~160時間放置することにより反応を沈静化させ、これにより、前記カルシウムを補強した海洋ミネラル複合体を作成するのが好ましい。
本発明で有効成分として使用することができるMCMは、例えば水深約80~120m程度の 清浄な海水域から汲み上げた海水を原料として調製される。表1に、典型的な黒潮海域(大洗沖)の海面下約100mで汲んだ清浄な海水18リットルに含まれる主要元素とその割合を示す。
この原料海水を、常圧あるいは減圧下で加熱して、好ましくは容量が50~70分の1程度、特に好ましくは60分の1程度となるまで濃縮する。ついで、この濃縮液から可能な限り塩化ナトリウムを除去する。すなわち、前記濃縮液に対し、好ましくはほぼ等容量の特に好ましくは99%グレード酢酸と木炭粉約 0.5 質量%を添加し、通常300~500°C程度好ましくは400°C程度に加熱した後、好ましくは-5°C~- 20°C程度、特に好ましくは-12°C程度まで冷却すると、塩化ナトリウムを主体とし水銀等の成分を含む成分が固形化する。この固形物をろ過する。ろ液について、上記と同様に(、1)酢酸と木炭粉の添加、(2)加熱後冷却、および(3)固形物のろ去(ろ過)の(1)~(3)の操作を、数回好ましくは3~5回程度、特に好ましくは4 回程度繰り返し、最終ろ液を濃縮する。カルシウムを補強する場合は、例えば、前記最初の濃縮液または前記最終ろ液に先に述べたようにして酢酸カルシウムを加えて反応を進め、カルシウムを補強した海洋ミネラル複合体(カルシウム補強MCM)を得ることができる。かくして得られる残留固形物からなる海洋ミネラル複合体(MCM)、及びカルシウムを補強した海洋ミネラル複合体(カルシウム補強MCM)等の常量及び生体内必須微量元素含有海洋ミネラル複合体は、海水中の有機成分であるピコプランクトンによりキレート化されており、これをそのまま本発明の畜産動物飼料添加剤に使用することができる。
MCMの化学組成を検討した。MCMは常量及び生体内必須微量元素を含有して構成されているが、塩化ナトリウムは分離され、カドミウム、有機および無機鉛、有機水銀などの有害物質は計測されなかった。MCMは、免疫活性を増強する反面、特記すべき副作用が無い、有力な免疫強化剤である。表2に塩化ナトリウムおよび有毒成分が除去され海水中の有機物でキレート化された結晶性固形分(MCM)1g中に含まれる元素成分を示す。前記ミネラルを含む結晶性固体粉末(MCM)がプランクトン由来の有機成分を約20~30質量%、特に好ましくは約25質量%含有する畜産動物飼料添加剤が好ましい。
[ 畜産動物への適用 ]
本発明の畜産動物飼料添加剤は、海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウムおよび有毒成分を除去して得られる、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる常量及び生体内必須微量元素含有海洋ミネラル複合体としてMCMを有効成分とすることができる。MCMは、必要に応じてカルシウム等の常量元素や生体内必須微量元素を適切に補強したMCM等として使用することができる。すなわち、本発明にかかる畜産動物飼料添加剤は、常量及び生体内必須微量元素含有海洋ミネラル複合体を有効成分とする畜産動物飼料添加剤として、畜産動物、例えば、鶏や豚等のウイルスや病原性細菌に対する抗体力や免疫力において優れ、例えば、ウイルス、細菌などによる感染症に対して優れた免疫活性強化作用効果を有する。このように、MCMやカルシウム補強MCM等の常量及び生体内必須微量元素含有海洋ミネラル複合体は、畜産動物の免疫活性を増強する反面、特記すべき副作用が無い点において優れている。
本発明の畜産動物飼料添加剤として常量及び生体内必須微量元素含有海洋ミネラル複合体を用いるときの1日摂取量は、通常、畜産動物体重の0.0002質量%程度である。摂取方法や形態に特に制限はなく、通常、畜産動物飼料に、前記海洋ミネラル複合体を、添加、混合して摂取させ る。また、前記海洋ミネラル複合体は、そのまま摂取させてもよいし、カルシウム等の常量元素や生体内必須微量元素を適切に補強して摂取させてもよい。これらに、ビタミンなどの通常の畜産動物飼料添加剤を配合して摂取させてもよ い。摂取させる形態は特に制限されず、通常鶏や豚等の畜産動物の飼料に添加して摂取させる形態で足り、固形分、結晶性固形分等の固形剤、あるいは、これらの水溶液等の溶液、懸濁液等の液剤として摂取させてもよい。
本発明の海洋ミネラル複合体を畜産動物飼料添加剤として用いるときは、以下の(a)~(d)に記載するように、鶏、豚等の畜産動物のウイルスや病原性細菌に対する抗体力、免疫力において優れ、例えば、ウイルス、細菌などによる感染症に対して優れた免疫活性強化作用効果を示す畜産動物飼料添加剤として優れた効果が得られる。
すなわち、本発明の海洋ミネラル複合体を、畜産動物飼料添加剤として、養鶏用のブロイラーまたは採卵用の鶏の飲料水に、質量比で、前記添加剤:飲料水=1:700~1000の割合で混合して摂取させることにより、次に記載の(a) ~(d)のような優れた効果が得られる。
(a)ヒヨコの死亡率が従来より低くなる。例えば、従来の約1/2になる。
(b)産卵が、従来より早くなる。例えば、従来より約25日早くなる。また、従来より採卵増となる。例えば、従来の約25%増で採卵することができる。
(c)鶏や豚の肝機能が強化される。 (d)抗原に対する抗体の産生が鶏や豚において約7倍になる。
実施例
以下に実施例を挙げ、本発明の畜産動物飼料添加剤について更に詳細に説明するが、本発明は これらの実施例によって何等制限されるものではない。
[マリーナ・クリスタル・ミネラル(MCM)]
黒潮海域(大洗沖)の海面下約100mの清浄な海水を18リットル採取し(成分は前記表1参 照)、これを加熱濃縮後木炭粉と酢酸で処理し、塩化ナトリウムと有機水銀等の生体に有害な成分を除去し、加熱と凍結・除去を繰り返し、その海洋ミネラルを凝縮・結晶化させ、前記表2に示す粉末状の固体(MCM)を調製した。カドミウム、有機および無機鉛、有機水銀などの有害物質は、原子吸光度計測法による定量計測で検出されなかった(表2※)。
[カルシウム補強MCM]
黒潮海域(ひたちなか市沖)の海面下約100m の清浄な海水を18リットル採取し、これを体積比約1/30に加熱濃縮後木炭粉と酢酸で処理し、塩化ナトリウムと有機水銀等の生体に有害な成分を除去し、加熱と凍結・除去を繰り返し、最終ろ液を得た。前記最終ろ液に対し体積比20%量の炭酸カルシウムを400°Cに焼成しこれにグレード酢酸を体積比で前記炭酸カルシウムと同体積量投入することにより酢酸カルシウムに変化させ、200°Cでこれを前記最終ろ液に、体積比5%量投入し、反応を進めた。反応開始後、160時間放置することにより反応が沈静化した後、結晶化させ、カルシウムを補強した海洋ミネラル複合体(カルシウム補強MCM) を得た。表3※に、調製したカルシウム補強MCMの一例について食品分析をした結果を示す。
[ヒヨコの死亡率]
雛の飼い始めから約4ヶ月経過し、産卵を開始した4月1日では、MCM有りは、2羽しか死んでいなかった(生存数517羽)。 MCMを全く摂取させないで育成する通常の場合は、卵を産むまでに、圧死や病気で520羽の雛が450羽前後に減少してしまう。A養鶏場では、今まで20年間以上鶏を飼っていて、卵を産むまでに500羽以上生き残ったことは一度もなかった。ひどいときには400羽以下になることもあった。雛の飼い始めから約5ヶ月経過した、5月9、1 0日の鶏では、生存数516羽であったが、MCMを全く摂取させないで育成した、前回のこの時期の鶏の数は、468羽であった。
[産卵開始時期]
MCM有り(雛の飼い始めからMCM液を与え続けた方。以下同じ。)が、雛の飼い始めから118日目(産卵開始日:4月1日)で、卵を産み始めた。これに対し、MCMなし(雛の飼い始めから2ケ月間だけMCM液を与え、その後はMCM液を与えなかったもの。雛の飼い始めから2 ケ月間経過後は通常の地下水を与え続けた。以下同じ。)は4月17日から産卵した。A養鶏場では、20年以上鶏を飼ってきて、雛の飼い始めから4ケ月以内に卵を産んだことは一度もなかった。通常、雛の飼い始めから産卵までは140日前後かかった。鶏のMCM摂取状況と産卵開始日及び雛の飼い始めから産卵開始までの所要日数を表4※に示す。
[採卵量]
雛の飼い始めから約5ケ月を経過した時点で、採卵量(産卵数、卵の大きさ、及び産卵の重さ)について、MCM有りの場合となしの場合を比較した(表5※)。
注)5月10日の12:00~14:00に産んだ卵を比較した。MCM有りの鶏は毛並みがよく、艶があった。MCM有りの卵は味に深みがあり、コクがあった。
また、卵の総質量、及び1個当たりの平均質量について、MCM有りの場合となしの場合を比較した(表6※)。
MCM摂取の有無による産卵数の差を表7※に示す。
実施例1:MCM液を鶏に与えたときの影響
[生育状況]
A養鶏場の鶏に前記カルシウム補強MCMを使用したMCM液を与え、その影響を観察した。鶏は、放し飼いで運動をさせ、粉末飼料(とうもろこし60%、魚粉10%、大豆10%、米ぬかその他20%)のほかに小松菜、大根などの野菜も定期的に与えた。抗生物質は与えなかった。その他の条件は、下記の通りであった。
品 種:イサブラウン(赤玉鶏)。 初期生育数:520羽。
方法:飲み水の変わりにMCM液(希釈液)を与える。
MCM液 :飲ませた濃度は、質量比で300 ~500倍前後(カルシウム補強MCM:水= 1:約300~500)とした。 試験開始日:前年12月5日(雛を仕入れた日)。 生育場所 :茨城県
以下、経時的に生育状況を観察した。
1.前年12月5日(MCM液300倍) <生存数519羽♂13羽(519羽中13羽がオス。以下、同様。)>
・雛(520羽)を飼いMCMの投与を始めた。
・搬入の段階ですでに一羽死んでいたので、生存数519羽。
2.当年1月9日(MCM液300倍)
<生存数517羽♂13羽> ・雛の羽の生え変わりが通常よりスムーズであった。 ・水だけ飲ませている雛より、MCM液(希釈液)を飲ませている雛の方が、飲む量が1.3~1.4倍量多かった。 ・雛の運動量が多かった。 ・えさを食べる量が多かった(通常は、温度が寒いほど、恒常性を保つために、えさを多く食べる傾向がある。当年は暖冬であった。) ・体格のばらつきが少なかった(通常、この時期の雛は体格にばらつきがある。) ・えさと水を飲んでいる分、がっしりとした体格になっていた。 ・圧死により2羽死亡(生存数517羽)。
3.当年2月12日(MCM液300倍)
<生存数517羽♂13羽>
・通常は、この時期では大根などを与えてもまったく食べないが、MCMを与えた雛では食べてしまった。
・病気はまったく出ていなかった。
・落ち着いており、人や物音にあまりびっくりしなかった。また、あまり群れをなしていなかった(ストレスに強かった)。
4.当年2月下旬(MCM液300倍と500 倍)
<生存数517羽:MCM有り259羽♂7羽; MCMなし258羽♂6羽>
・517羽を2つグループに分け、一つはMCMを与えるグループ、もう一つは与えないグル ープとした。
・この時期は、MCMを500倍に薄めたものの方を好んで飲む傾向があった(雛の水を飲む量がこのころから多くなるためと考えられた)。
5.当年3月15日(MCM液300倍と500 倍)
<生存数517羽:MCM有り259羽♂7羽; MCMなし258羽♂6羽>
・MCMを与えていた方では、落ち着いており、あまり群れていなかった。
・一部のものは、とさかが立ち始め、赤くなってきており、もう少しで卵を産む前兆であった(MCMを与えていた方が、その数が多かった)。
6.当年4月1日(MCM液300倍と500 倍)
<生存数517羽:MCM有り259羽♂7羽; MCMなし258羽♂6羽>
・MCMを与えていた方が、雛の飼い始めから118日目で、卵を産み始めた(1個)。
(A養鶏場では、20年以上鶏を飼ってきて、雛の飼い始めから4ケ月以内に卵を産んだことは 一度もなかった。通常、雛の飼い始めから産卵までは140日前後かかった。)
・圧死や病気で、通常、520羽の雛が卵を産むまでに450羽前後に減少してしまうが、MCMを与えたものは、2羽しか死んでいなかった (A養鶏場では、今まで20年間以上鶏を飼っていて、卵を産むまでに500羽以上生き残ったことは一度もなかった。ひどいときには400羽以下になることもあった)。
7.当年4月17日(MCM液300倍と50 0倍)
<生存数516羽:MCM有り258羽♂7羽; MCMなし258羽♂6羽>
・MCMなし(雛から2ケ月間だけMCMを与 えたもの)が卵を産み始めた(1個)。
・MCM有りが溺死で1羽死亡(生存数516 羽)。
8.当年5月9、10日(MCM液300倍と 500倍)
<生存数516羽:MCM有り258羽♂7羽; MCMなし258羽♂6羽>
・5月9日に産んだそれぞれの卵の数:MCM 有り88個;MCMなし80個。
・5月10日(5ケ月目頃)の12:00~1 4:00に産んだ卵の重さをMCM有無のそれぞれの小屋で量ったらMCM有り3.7kg、 MCMなし3.0kgで、MCM有りの方が大きく、数が多かった。
・5月10日の鶏では、MCMを与えたものの毛並みがよく、艶があった。
・卵の味が、MCMを与えたものは味に深みがあり、コクがあった。
・MCMを与えていない、前回の今の時期の鶏の数は、468羽であった。
9.当年5月17,18日
<生存数516羽:MCM有り258羽♂7羽; MCMなし258羽♂6羽>
・5月17日:MCMの有無によって、卵の総質量に1kgの差があり、MCM有りの方がMC Mなしより重かった。
MCM有り7.5kg。
MCMなし6.5kg。
・5月18日:MCMの有無によって、卵1個当たりの平均質量の差は3g以上あり、MCM有 りの方がMCMなしより重かった。
MCM有り卵数124個、7.2kg。
MCMなし卵数119個、6.5kg。
1個当たりの平均質量は、MCM有り58.1g(M サイズ)、MCMなし54.6g(MSサイズ)で
あった。
10.当年5月29日
<生存数516羽:MCM有り258羽♂7羽; MCMなし258羽♂6羽>
・MCMの有無で、1日あたり2kg(35個ぐらい)の差があり、MCM有りの方がMCMなしより重(多)かった(5月29日の時点で6割ぐらいの鶏が卵を産んでいた)。
上記表7によれば、雛の飼い始めから162日経過で、MCMの有無によって、卵の総質量に1kgの差 があり(5月17日観測)、卵1個当たりの平均質量は、MCM有り58.1g(Mサイズ)、MCMなし4.6g(MSサイズ)であった(5月18日観 実施例2測)。卵1個当たりの平均質量の差は3g以上で、MCM有りの方がMCMなしより重かった。 また、5月29日の観測では、MCMの有無で、 1日あたり2kg(35個ぐらい)の差があり、MCM有りの方がMCMなしより重(多)く、こ の時点で6割ぐらいの鶏が卵を産んでいた。
3月30日以降の産卵数(個)の、日付(月/日) 毎の経時的推移を図1に示す。これによれば、M CM有りの鶏の産卵数(MCM+)は、MCMなしの鶏の産卵数(MCM-)と比較して常に産卵数が多いことが判る。
[斃死数]
Y農場において、鶏舎No.11:羽数3,30 0羽(雄雌混合)、及び鶏舎No.12:羽数5, 220羽(雄雌混合)を、それぞれ対照区とし、従来体系で鶏の飼育をした場合と、鶏舎No.1 3:羽数6,200羽(雄雌混合)を試験区として、前記カルシウム補強MCMを飲水投与して鶏を飼育した場合について、表8※で示される 実施内容で飼育し、表10で示される実施結果 を得た(図3の斃死羽数推移グラフ参照)。表1 0※によれば、試験区に比べ対照区は約1.9倍 の斃死率となっている。この結果は、試験区が対
[圧死数] 照区と比較して斃死率において著しく優れた育
MCM液を使用した鶏の圧死数のグラフを図2に示す。これによれば、MCM液を使用した鶏 (飼育開始日:H18.12.5)の圧死(集団の中で潰される死)数は、MCM液を使用しなかった鶏(飼育開始日:H18.4.12;H18.6. 19;H18.9.29;H19.2.26;H19. 5.10)の圧死数と比較して著しく少ない。これは、MCM液を使用した鶏は、集団をあまり形 成しないため、不安などのストレスが軽減されているためと考えられる。
実施例2測)。卵1個当たりの平均質量の差は3g以上
で、MCM有りの方がMCMなしより重かった。 また、5月29日の観測では、MCMの有無で、1日あたり2kg(35個ぐらい)の差があり、MCM有りの方がMCMなしより重(多)く、この時点で6割ぐらいの鶏が卵を産んでいた。
3月30日以降の産卵数(個)の、日付(月/日) 毎の経時的推移を図1に示す。これによれば、M CM有りの鶏の産卵数(MCM+)は、MCMなしの鶏の産卵数(MCM-)と比較して常に産卵数が多いことが判る。
実施例3
[MCM液使用食品検証比較]
実施例1において、雛から2ヶ月間、300倍希釈のMCM液を与え、その後、500倍希釈のMCM液を与え続けた鶏が産卵した鶏卵(以下、「MCM品」ということがある。)について、雛から2ヶ月間、300倍希釈のMCM液を与え、その後、通常の地下水を与え続けた鶏が産卵した 鶏卵(以下、「コントロール」ということがある。) と比較した、MCM液使用食品検証比較を実施した。品質比較検証結果を表11に示す。なお、表11には、MCM液を全く使用していない、一般家庭で使用されている鶏卵(以下「、一般市場 流通鶏卵」ということがある。)との比較も併せて示してある。また、比較検証は、実施例1における当年7月7日産卵品について、産卵日から 11日間家庭用冷蔵庫内に保存した鶏卵を用いて7月18日に実施し、比較検証内容は、鶏卵卵 黄係数、鶏卵卵白係数、鶏卵卵黄の色調比較、及びその他(殻、卵白、及び卵黄の質量組成、及び鶏 卵質量)とした。
[割卵加工適正]
卵白の役割、すなわち、卵白係数(=濃厚卵白の高さ ÷ 濃厚卵白の直径の平均値)(表11※注 2)の役割の一つに製菓加工適正がある。鮮度低下による卵白の主要たんぱく質、オボトランスフェリン、オボグロブリンの含有量の低下は、泡立ち性に係わり、泡立ち性は製菓に重要である。 卵白は、菓子のボディとなる熱凝固性の役割を担っており、卵白の鮮度は重要な加工適正である。すなわち、卵白係数は鮮度指標そのものでもある。卵殻の気孔から炭酸ガスが拡散することにより、卵白のpHが中性からアルカリ性(典型 的にはpH7.8→9.5)になり、濃厚卵白が水様化し、比重低下につながる。また、卵黄係数(= 卵黄の高さ ÷ 卵黄の直径)0.38~0.44の 範囲が新鮮な鶏卵とされている(表11注1)。 卵黄のたんぱく質は、熱によって凝固するが、卵白ほど凝固力は強くない。卵黄係数は、加工適正を表している。すなわち、卵黄中の成分レシチンの乳化作用を菓子加工に利用する。また、卵黄 は、食品を淡黄色に着色する。この視覚的効果は、重要な加工適正である(表11※注3)。
表11※の結果によれば、MCM品の卵黄係数は0.41、及び卵白係数は0.16であり、経時 的変化による品質劣化兆候は無かった(表11 注4)。このように、MCM液を使用することにより鶏卵の品質劣化は抑制され、鮮度維持に関して優れている。また、鶏卵を使用した加工食品を生産する場合、卵黄係数、及び卵白係数の高い鶏卵を使用することは、これを使用した惣菜類やデザート類の美味しさが向上する点でも優れている。収率アップによるコストダウンにもつながる。色調に関しても、MCM液を使用した鶏卵の卵黄色調は、卵黄の色が黄色一色のため、加工食品を生産した場合、食欲をそそる商品に仕 上がるので優れている。商品によっては、黄色を鮮明にするため、ベータカロチン等を使用するが、MCM液を使用した鶏卵では、ベータカロチン等を使用することなく、食欲をそそる商品に仕上げることができる。もっとも、必要に応じて、ベータカロチン等の添加剤を使用しても差し支えない。
[視覚による品質比較検証]
図4において、コントロール(左側)では、濃厚卵白の盛上がりが小さいのに対し、MCM液を継続して与え続けた鶏卵MCM品(右側)では、濃厚卵白の盛上がりがコントロールより大きく、濃厚卵白の盛上がり状態に明確な差が出ている。
図5において、コントロール(左側)では、卵黄の色調が黄色に若干赤色がかった色調であるのに対し、MCM液を継続して与え続けた鶏卵MCM品(右側)では、卵黄の色調が混ざりっけのない黄色であり、卵黄の色調に差が出ている。また、コントロール(左側)では卵黄質量13.0 g、前記MCM品(右側)では卵黄質量13.5 g、と、MCM品の卵黄の方がコントロールの卵黄より少し重いが、図5で比較すると、MCM品の卵黄の方がコントロールの卵黄よりも小さく感じる。これは、卵黄係数の差に起因する。
前記図5では、コントロールと鶏卵MCM品との卵黄の色調の差は小さいが、図6においては、 MCM液を全く使用していない一般市場流通鶏卵(左側)と、MCM液を継続して与え続けた鶏卵MCM品(右側)との比較では、卵黄の色調に大きな差があり、一般市場流通鶏卵では、赤みが強い色調を呈していた。
実施例4:MCM液が食品に与える効果検証
[目玉焼き]
加工食品として、原料が100%鶏卵で、鶏卵の美味しさ=食品の美味しさである目玉焼き(2 個分)を選んだ。鶏卵として、MCM品と、コントロールをそれぞれ使用して加工食品を生産した場合の比較検証を実施した。実施例1において、産卵後9日経過鶏卵を使用し、焼成後の卵白係数を比較し(表12※,図7)、美味しさを比較し た。
美味しい鶏卵の条件の1つとして、卵白係数が高いことが挙げられる。前記表12によれば、MCM品焼成後の卵白係数は、コントロール焼成後の卵白係数の約1.4倍であることが判る。また、検証者Iの美味しさ比較によれば、同一品種 の鶏が、同じ養鶏場で、同じ飼料を食べ、同じ飼い方をされて産卵した卵とは思えないほどに、美味しさに差があり、MCM品の目玉焼きは、コントロールの目玉焼きよりも美味しい。MCM品の目玉焼きは、今まで食べたことが無い、新しい食品のように美味しい目玉焼きである。MCM品の目玉焼きを食べた後で、コントロールの目玉焼きを食べると、卵黄、卵白ともに水っぽく、ベタベタした食感で、美味しさに数段の差がある。鶏卵MCM品を、これを主原料とする加工 食品に使用すると、高付加価値商品が生まれる。