MCM論文のご紹介② MCMによる生体機能活性効果

MCMによる生体機能活性化効果

海洋化学研究会 小椋 武

山形大学医学部 藤井 聡

はじめに
微量元素が、生体の生命活動を支える細胞レベルの代謝に必須な構成要素であることは、以前から予想されていた。さらに、最近、生体内に低濃度しか存在しない元素の分析に必要な測定法が進歩し、かつ、生化学的検討で種々の微量元素の機能が明らかにされてきたため、微量元素の必須性が確認されるようになってきた(1)。

タンパク質・核酸・水として生体を構成している元素の主要なものは水素(H)•酸素(0) •炭酸(C)・窒素(N)で、これに少量のリン(P)や硫(S)が含まれている。さらに、骨や体液の構成元素としてカルシウム(Ca) •ナトリウム(Na) •カリウム(K) •マグネシウム(Mg) •塩素(Cl)がある。これらの常量元素に対して生体内には必須微量元素が存在する。すなわち、鉄(Fe) •亜鉛(Zn) •銅(Cu) •ヒ素(As) ・クロム(Cr) •コバルト(Co) •セレン(Se) •マンガン(Mn) •モリブデン(Mo)・珪素(Si).フッ素(F).バナジウム(V)・ニッケル(Ni) •スズ(Sn) •ヨウ素(I)等が挙げられる。これらの必須微量元素は何れも荷電状態が変化しやすい遷位元素で、生体内で電子授受による酸化還元反応の触媒となる酵素や補酵素の構成因子として働くものが多い(1-6)。

 

1.ミネラルと中枢神経障害の予防
脳虚血•脳血管性痴呆と微量ミネラルの関係
近年の幹細胞研究の発展により、中枢神経系に於いても生涯を通じて神経幹細胞が存在することがあきらかになってきている。さらに、この神経幹細胞は主として側脳室下帯と海馬歯状回に存在し、加齢や脳虚血により増加または減少することが報告されている。この神経幹細胞の発現は樣々なストレスに対する生体反応であると考えられるようになってきた。一方 Copper(銅)/Zinc(亜鉛)superoxide dismutase(SODl)は、スーパーオキサイドを過酸化水素に還元する酵素であり、これまでに脳虚血に対して神経保護
作用があること、また、加齢に伴い脳組織で、同酵素の活性が減少して過酸化物貴が増加すること、さらに、SOD1の過剰発現マウスでは過酸化物質が減少することが報告され、SOD1は脳虚血や加齢に伴う痴呆に何らかの影響を与えていることが示唆された。即ち、微量ミネラルはSOD1酵素を介して酸化的ストレスを緩和し、神経幹細胞の発現に影響を与えて加齢に伴う記憶障害を抑制しているのではないかと考えられている。
成人の生体内には亜鉛は比較的多く2g程度あり、1日の食物中に含まれる亜鉛は10mg程度であるが、吸収されるのはその数%といわれている。亜鉛は炭酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、カルボキシぺプチダーゼなど糖、タンパク質、核酸の分解と合成に必要な複数の酵素の必要構成要素であり、かつ、インスリン構成要素でもある。成人1曰当りの摂取量は約10mgであるが、イオン化されていないものは消化管から吸収されにくく、実際の吸収量はその数%といわれる(1、2、3、8)。亜鉛欠乏症はアルコール性肝硬変患者に高率に発生し、これらの患者では肝細胞の代謝機能が全般的に傷害されることが知られている(7, 8)。
脳ではNa、K、Mgについで多く、なかでも海馬に含量が多いことが知られている。海馬はグルタメートを神経伝達物質としており、グルタミン酸脱炭素薛素などグルタミン酸代謝に関係する諸酵素の働きに亜鉛が関与していることが推測される。さらに、海馬神経細胞は慢性の酸化ストレスである加齢•虚血にたいして脆弱で、亜鉛はSOD1を介して酸化ストレスから海馬神経細胞を守っていることが、近年、明らかにされつつある。

 

海馬と記憶障害•痴呆
海馬は大脳辺縁系•側頭葉内側部に位置している。記憶のメカニズムは大変複雑で、海馬が大きな役割を果たしている。1887年にKorsakoffは重症のアルコール中毒病患者の示した極度の痴呆症状を、大脳の辺縁系を中心にした病変と考え、ここで海馬を含む
側頭葉に起きた病変を記載している(9)。そして、1900年にBachterewが、側頭葉内側の構造異常が記銘の過程に関与していることを記載した(10)。これが現在最も広く巧用されているKorsakoff症である。Korsakoff症の主症状は、(1)逆行性健忘amnesia、(2)記銘memorizationと再生recallの障害、(3)失見当識 disorientation(4)作話または虚談confabulation、記憶の脱落を補うために、架空の話を作り上げて繕うこと、等が挙げられている。障害部位は乳頭体や視庄内側部の著明な変化と、海馬と扁桃核を含む側頭葉に見られる。
1953年にScovilleらがH.Mという名前で記載した症例は、てんかんを治療するために側頭葉内側部切除術を行った。この症例は、その後に高次精神神経機能がどの様に変化するか、実に詳細に観察された。手術を受けた1953年以降では記憶をすることが出来なくなったが、手術前の出来事について記憶は正確に保たれていた。これらの報告により海馬は記憶や学習の形成に重要な部位であることが明らかにされた。
脳の中でも海馬の神経細抱は非常に脆弱で破壊されやすい。虚血などのストレスが加わると海馬領域では遅発性神経細胞死(delayed neuronal cell death)が生じやすいとされ、痴呆における記憶•学習障害の原因と考えられている(11)。

 

遅発性神経細胞死と酸化的ストレス
虚血等のストレスが加わると、各種ラジカルが産生されやすい状況になる(12)。
過酸化脂質や一酸化窒素の増加に伴うラジカル障害が、海馬神経細胞の機構のひとつとして有力である。加齢脳では慢性の酸化的ストレスに加えて虚血ストレスにさらされている。さらに、脳組織内でSOD1の活性が減少しているために遅発性神経細胞死が生じやすい状態である。脳の中でも海馬が酸化的ストレスに最も脆弱な部位であることから、痴呆の初期症状に記憶障害が出現すると考えられる。

ここで、遺伝子操作を加えてSOD1を過剰発現させたマウスを用いて、慢性ストレスとしての加齢、急性ストレスとしての一過性虚血における神経幹細胞の動態を検討した報告を紹介する(13)。
(方法) Human Cooper/Zinc superoxide overexpressing mice(Tg)と Wild typemice(Wt)、それぞれ3ヶ月齢、16ヶ月齢にBrduを腹腔内投与し、24時間後に灌流固定、抗Brdu抗体で免疫染色した。また3ヶ月齢マウスの中大脳動脈を一過性に閉塞した後Brdu陽性細胞(神経幹細胞)の数•性状を検討した。
(結果)3ヶ月齢マウスではBrdu陽性細胞はWt、Tgで差はなかったが、16ヶ月齢マウスではBrdu陽性細胞が減少しているものの、WtにおいてはTgよりも有意に少なかった。3ヶ月齢のマウスの中大脳動脈を閉塞して一過性に虚血すると、Tgの虚血脳はWtよりも海馬において神経幹細胞が有意に増加した(下図)。
(結論)加齢脳では虚血ストレスにさらされと、SOD1により酸化的ストレスが緩和されることにより、神経幹細胞の発現が増加することが明らかになった。

 

以上の実験から導き出された結論から、SOD1の活性化が加齢•痴呆の原因となる酸化的ストレスを緩和し、遅発性神経細胞死を防ぎ、神経幹細胞の活性化を促す事が推測される。海水中に存在するミネラルで、微量元素と呼ばれているものには、生体内で電子授受による酸化還元反応の触媒となる酵素や補酵素の構成因子として働くものが多く、SOD1もその一つである。
酸化的ストレスを緩和する酵素しては上述の銅と亜鉛を含むもSODの他にセレン、鉄、マンガンなどを含むグルタチオンパーオキシダーゼなどもあり加齢に伴うその他の変化、例えば発ガンや動脈硬化などや、肝障害を防ぐ作用を持っている。
このように、複数の微量元素が相互に作用しあって各臓器•組織に障害をあたえる活性酸素やフリーラジカルを処理する能力を発擇するものと考えられている。さらに、鉄、コバルトなどの微量ミネラルの欠乏で脊髄変性による失調症、パーキンソン症候群などが引き起こされることはよく知られており、微量ミネラルは中枢神経の機能を維持する上で欠くことができない栄養素である。
さらに、カルシウムとマグネシウムの不足によりリンパ球機能の異常を招いて多発硬化症をきたす事が報告されており、海水中に含まれるミネラルは神経細胞のみならず、リンパ球の機能に影響を与えることが示唆されている。

 

2.ミネラルと生体機能の活性化

これまで、虚血や動脈硬化は脳機能に重大な影響を及ぼし、ミネラルはこれら老化による脳機能の低下を防ぐ可能性があることを論じた。一方、老化や動脈硬化を引き起こす過酸化物質の産生は全身的な機能低下を引き起こす可能性がある。その代表的なものに、免疫機能の低下が挙げられる。免疫機能の低下は発ガンや感染症の発生を誘発するため、健康維持のために免疫機能を維持することは重要な問題である。カルシウム、マグネシウム、セレン、亜鉛などの欠乏が発ガン、免疫異常を引き起こすことが知られているが、免疫機能に関して複数のミネラルが相乗的に作用する点については、長年、明らかにされなかった。
MCMは図1に表すように、海水から精製した常量•微量元素の複合体である。以下、MCMを用いて実験的に免疫機能の活性化を実証した論文を紹介しつつ、免疫機能に対するミネラルの相乗効果について考察する。
MCMによるリンパ球機能の活性化
リンパ球が海水より精製したマリーナ•クリスタル•ミネラル(以下、MCMと略す)で活性
化し、ヒトで免疫機能が改善する可能性がある(Nutrition Research Vol.l9(1999)
p.1287-1298 :immunomodulation of Human NK cell activity by Marina Crystal Minerals (MCM), A Crystallized Mixture of Minerals and Trace Elements from Sea Water by Mamdooh Ghoneum and Takeshi Ogura)。これは、ヒトの生体内でナチュラルキラー細胞の免疫活性に対してMCMが賦活作用を持つことを検討した論文であるので、以下に要約する。

(方法と結果)
健康体の20人に2ヶ月間、体重1キログラム当たり1日20ミリグラムのMCMを投与した。これらのヒトより求めたナチュラルキラー細胞の活性を標準S1—Cr release assay法で検討した。次いでフローサイトメトリー法で、ナチュラルキラー細胞CD16比率とCD56/CD3比率を求めた。
(結果)
1)経口投与開始2週間後のナチュラルキラー細胞活性レベルは投与前の2倍に増強した。この活性化は経口投与開始1〜2力月後でも高レベルを維持していた。一方、MCMの投与を中断すると、ナチュラルキラー細胞活性はMCM投与前のレベルに戻った。

2)免疫細胞中のナチュラルキラー細胞が占める割合の変化が無い一方で、ナチュラルキラー細胞全体で活性化された。これはMCMが細胞1個あたりのナチュラルキラー細胞全体で活性化された。これはMCMが細胞1個あたりのナチュラルキラー細胞活性を増強した事を表す(図4)。

3)抹消血管から採血したヒトリンパ球をMCMと16日間培養した場合、培養液中のMCM濃度(25μg/ml、100μg/ml)に応じてナチュラルキラー細胞の活性が155%、210%増強した(図5)。
4)濃度100μg/mlのMCMとともに抹消リンパ球を培養したところ、インターフェロン-γの産生が8倍増強した(図6)。
5)MCMは、PHAやCon A、PWM等白血球分化物質を与えてリンパ球を培養した場合でも、与えなかった場合でも、免疫機能を抑制しなかった。
(結論)
MCMは、免疫活性を増強する反面、特記すべき副作用が無い点で癌に罹患した患者に対する有力な免疫治療物質である。

 

(考察)
MCMナチュラルキラー細胞活性を増強するメカニズムについては不明な点が多いが、おそらくインターフェロンの産生によりと思われる。MCMを抹消血リンパ巧と供に培養するとインターフェロンのレベルが8倍になった。様々な生物活性物質が大顕粒球からのインターフェロン産生を誘導し、産生したインターフェロンが大顕粒球の自己活性化を誘導するが、MCMは常量•微量元素で構成されているが、複数以上の元素が免疫活性化物質として働いていると考えられる。

 

MCMによる内分泌機能・糖代謝機能の活性化
MCMが免疫細胞の活性化だけではなく、膵臓ランゲルハンス島•細胞の内分泌機能および細胞における糖代謝を活性化して実験糖尿病を改善したという実験事実がある(14:藤井聡、水野斎司、小椋武:実験糖尿病マウスに対する海水ミネラルの効果 日本医事新報3675:47.1994)。遺伝性糖尿病マウスおよびストレプトゾトシン投与で実験的に誘導した糖尿病マウスに投与した結果、両者に高血糖状態の改善効果という主旨である。論文の一部を抜粋して紹介する。
実験糖尿病マウスに対する海水ミネラルの効果
生後4週齡から6週齢のddyマウス(1群10匹)を用い、マウス体重1kgあたり100mgのストレプトゾトシン(STZ)を14日間連続腹腔内に投与した。観察期間中は連日体重および空腹時血糖値を測定し、十分な血糖値の上昇が見られた時点で0.3%MCM溶液を飲用水として自由にあたえて、水道水投与群(コントロール群)と比較した。また、遺伝性糖尿病マウス(KK・AYマウス)に水道水ないし、0.3%あるいは0.5%MCM溶液を欽用水として自由に与え連日体重および空腹時血糖値を測定した。

 

結果
(1)ストレプトゾトシン投与で誘導したマウス糖尿病に
対するMCMの高血糖改善効果
ストレプトゾトシン(STZ)は腹腔内投与によりすい臓ランゲルハンス島を破壊したマウスの空腹時血糖値は、投与前(105+25mg/dl:mean+S.D.)と比較して投与30日後に有意(P<0.05)に上昇(300+120mg/dl)した。この時点で1群にMCM投与を開始し、他群はコントロール群として水道水投与を続け、両群の空腹時血糖値および体重の推移を比較した(図4、5)。STZ投与後30日間は、両群は水道水の投与を受け、共に体重の増加と血糖値の上昇がみられた。STZ投与30日以降、水道水の投与が継続されたコントロール群では緩やかな体重増加が続いたが、MCM投与群では体重増加が抑制される傾向にあった。空腹時血糖値はコントロール群ではSTZ投与約70日後まで上昇し、平均約500mg/dlまで上昇した。一方、MCM投与群ではMCM投与40日で空腹時血糖値が統計
学的に有意(P<0.05)に低下し、投与60日後の値は115+10mg/dlと正常値に復した。
以上より、MGMはSTZで誘導したマウスの高血糖を正常値レベルまで改善させる効果があると結論した。
図9はSTZ投与90日後のすい臓ランゲルハンス島の組織像である。コントロール群(A)では萎縮したランゲルハンス島が認められる。一方、MCM投与群(B)はコントロール群と比較するとランゲルハンス島の細胞数の減少や萎縮の程度は軽度である。さらに、MCM投与群のランゲルハンス島では周囲にリンパ球様の単核細胞の浸潤が見られる。
鏡検時期がSTZ段与後約90日を経過しているので、既に急性の炎症反応期は過ぎていると考えられるため、この検鏡所見はMCMの投与で免疫系と考えられる何等かの生体防御機構が賦活されて生じた変化である可能性が考えられた。

 

MCMによる高血糖の改善について
STZ投与マウスでは、腹腔内に投与されたSTZがすい臓ランゲルハンス島細胞を破壊してインスリン分泌能を低下させるため、糖尿病を発症する。MCMの投与で実験糖尿病マウスの高血糖が改善される機序として推測されるものの1つに、MCMに含まれる必須微量元素の作用が挙げられる。
MCMが実験糖尿病マウスの高血糖状態を改善する機序として、全身の細胞に取り込まれたクロムや亜鉛などの必須微量元素が酵素を活性化して糖。蛋白質代謝を賦活し、糖の取り込み能を改善させていることが推測される。とくに、肝細胞では糖からグリコーゲンやタンパク質•脂質への同化が行われるように糖•蛋白質•脂質代謝が活発であり、補われた複数の必須微量元素がさらにこれらの代謝を賦活化して高血糖状態を改善している可能性がある。
クロムは、糖、アミノ酸、脂質代謝に不可欠で、インスリンを必要とする糖代謝に必須な酵素の構成成分である。成人1日当りの必要量は約30μgで、クロム欠乏症では耐糖能が低下し、血中コレステロールが高くなり糖尿病様症状がみられる。(6、8)。また、亜鉛は炭酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、カルボキシぺプチダーセなど糖、蛋白質、核酸の分解と合成に必要な複数の酵素の必要構成要素であり、かつ、インスリン構成要素でもある。成人一日当りの摂取量は約10mgであるが、イオン化されていないものは消化管から吸収されにくく、実際の吸収量はその数%といわれる。(1、2、3、8)。亜鉛欠乏症はアルコール性肝硬変患者に高率に発生し、これらの患者では肝細胞の代謝機能が全般的に障害されることが知られている(7、8)。

 

MCMに含まれる成分が実験糖尿病マウスのインスリン分泌能を改善させた可能性が挙げられる。今回の検討では血中インスリン濃度の測定を行っておらず確証は得られていないが、STZ投与マウスのランゲルハンス島の検鏡所見よりMCM投与群で細胞の脱落•萎縮が少なく、β細胞からのインスリンの分泌能が保たれている事が推測された。この機序として、まず、MCMに含まれる複数の必須微量元素が、酵素の活性化をはじめとする細胞機能全般を賦活化して、残存したランゲルハンス島β細胞のインスリン分泌能を促進して損傷を受けた細胞の修復を促進してインスリン分泌能を回復させた可能性が挙げられる。

 

終わりに
MCMによる生体機能活性化について

これまでの検討でMCMは免疫機能およびインスリン分泌•糖代謝改善機能を有する事を明らかにした。実際、STZにより破壊されたランゲルハンス島細胞の除去や修復に関する検鏡所見(図9)からMCMが免疫系を賦活して何等かの生体防御機構を活性化させている、所見がある。亜鉛欠乏症では免疫能が低下すること(8)から、MCM中の微量元素の働きで免疫能に由来する生体機能の活性化が起こっているのかも知れない。
さらに、海水中のミネラルが幹細胞を活性化してインスリン内分泌細胞に分化し、これがインスリン分泌機能を改善させた可能性がある。複数の海水ミネラルにより SOD1の活性が増強されると神経系では幹細胞の活性化が誘導される(13)が、神経系のみならず、免疫系、内分泌系でも幹細胞が刺激されて分化し、これらの機能が活性化される可能性がある。さらに、生体で再生能が高いものに肝細胞が挙げられるが、上記の機序によりSOD1の活性化により肝炎などで障害を受けた肝細胞が活発に再生する可能性がある。実際、MCMによりヒトでトランスアミナーゼが著明に改善される例があり、肝臓においては酵素代謝を活発化するのみならず肝細胞の破壊を抑制しつつ再生を促進する可能性があると考えられる。
これら全身の幹細胞の発現は様々なストレスに対する生体反応であると考えられるが、MCMはこれら幹細胞の発現を促進する可能性がある。MCMは海水ミネラルの複合体であり、SOD1酵素を介して酸化的ストレスを緩和し、幹細胞の発現に影響を与えて生体を「若返らせている」のではないかと考えられている。

 

文献

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